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【中編】幸福のさゆりんご母娘 【超大作妄想物語】



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437 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 20:08:00.13 ID:hxHh+5Np0

我々は一度この場所から離れることとする。

向かうのは再び港区青山、しかし前回入ったビルではない。

乃木坂駅からほど近い外苑東通り沿い。そこに建つ小さな出版社へともぐりこむ。

そこでは我々も知っている二人の人物が会話をしていた。

桜井とななみんだ。

 

「寧々があんな奴だとは思わなかったよ。」

ななみんは怒りを隠そうともしていない。

「まさかそんな風に思ってたなんてね、当時のアンダーの子達みんなそうだったのかな・・・」

桜井は怒りよりもショックが大きいようだ。その眼には深い失望の色が浮かんでいる。

「さぁね。だとしたら、そういう気持ちだからアンダー止まりだったんじゃない」

「そんなことないよ、私みたいにキャプテンってだけで選抜を埋めてる人間がいたから・・・」

 

橋本は手元に灰皿を寄せる。このご時世にしては珍しくこの会社は煙草が吸えるらしい。

胸のポケットから箱を取り出し、ライターで火をつける。どうやら最後の一本だったようだ。箱を開けた時一瞬その表情は曇る。

「また、その話?いつまで引きずってんのよ。それより問題は、万理華とのコラボの話でしょ。」

煙を吐きながらイライラと橋本は続ける。

「寧々が協力してくれない以上、私たちでなんとかするしかないわけ。所詮寧々はプランナーだし、本丸の万理華がやる気に

なってくれれば成功するよ」

「でも、万理華の連絡先知ってるの寧々だけでしょ?」

桜井は気持ちを取り戻したのだろう、いつものようにその顔には頑強な意志が宿っている。

 

「そこが問題なの、でも前寧々から万理華今高円寺に住んでるって聞いたことがある。なにか手がかりがそこにあるかも。」

「高円寺か、相変らず万理華はそういうのが好きなんだね。」

「多分何も変わって無いよ、あの頃と」

遠い目で橋本は呟く。

 

「じゃあ高円寺で情報収集だね。」

桜井が元気よく立ち上がる。

「早速いきますか!」

橋本も続いて部屋を出て行った。

 

441 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 20:52:57.76 ID:hxHh+5Np0

我々はそこを離れる。そしてまた初めて来る建物へと入って行く。

沢山の機材が配置された録音ブース。ここはスタジオのようだ。

 

“I’m too misty, and too much in love.

Too misty,

And too much…

In love…..look at me…”

 

女が歌っている。静かな歌だが、その歌声は月の光のように道を照らしだす強い力がある。素人ではないだろう。

 

.「凄い!!凄いよ、ひめたん!!!」

歌が終わると別の女がブースの中に入ってきた。二人はともに同じくらいの年齢のようだ。

「へへ・・・」

ひめたんと呼ばれた女は。恥ずかしそうに俯く。

「感動しちゃった。まさかひめたんここまで上手くなってるなんて。エラ・フィッツジェラルドも顔負けだよ!」

「ほめ過ぎだよ~。世界のイノウエに比べたら私なんかまだまだだって」

「またまた謙遜しちゃって。ひめたんだって今や日本を代表するシンガーなんだからさ。自信持たなきゃ。」

「ありがとう、じゃあ次はさゆのサックス生で聞いてみたいな」

「高くつくよー?」

さゆと呼ばれた女はそういたずらっぽく微笑むと、サックスを取り出した。

 

バンドメンバーにそっと目配せすると演奏が始まる。

曲は”Days of Wine and Roses”だ。

その瞬間スタジオの空気が変わる。

先ほどまであった親密な雰囲気は一気に打ち消され、我々は音楽と直接対峙させられる。

ソニー・クリス直系のブルージーで軽快なサックスがスウィングするビートと混ざりあい、そこには天才的なグルーヴが生ま

れている。

その場にいる誰もが、そのグルーヴの中で夢遊病患者のように踊りだす。

まるで質のいい大麻を吸った時のような心地よいトリップだ。

そして、あっという間に曲は終わる。

我々は突然の夢の終わりに呆然と立ち尽くす。

 

演奏を終えたさゆは恥ずかしそうにはにかんでいる。

「・・・どうだったかな?」

誰も感想を述べるものはいない。それほどまでに彼女の演奏は圧倒的であった。

 

450 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 22:02:26.90 ID:hxHh+5Np0

しばらくしてひめたんが口を開く。

「凄いよ・・・全然違う・・・」

それを聞いたさゆは嬉しげに叫んだ。

「でしょ!さゆにゃんヽ(。・ω・。)正義!」

「まいったなぁ、これじゃあ一緒にライブしたら私が霞んじゃうよぉ」

ひめたんは悲しげだ。

 

「そんなことないって!ひめたんもめちゃくちゃ上手いからさ。」

「そうかなぁ・・・」

「そうだよ!しかもひめたんにはビームがあるじゃん!」

「やだ~そんな昔のこと覚えてるの、恥ずかしい」

「何言ってんの!必殺技でしょ!久々に見てみたいなぁ」

「えー恥ずかしいよぉー」

「いいからいいから。ほらほら」

 

少しの間照れていたひめたんだったが、意を決したのだろう。

手をピースにするとそれを目の前に当てて叫んだ。

「ひめたーんビーーーーム!!!!」

 

スタジオの空気が凍りつく。それも仕方がない、30代半ばと思しき女がやることとしてはあまりに奇天烈である。

そんな中さゆだけは一人はしゃいでいる。

「うわーーー久々に見たーーーー全然衰えてないね!感動したよ!!」

「・・・喜んでんのさゆだけだよ、周りの空気どうしてくれんのー」

「あれ?皆にはビーム効かなかったみたいだね」

「もー」

微笑ましい二人だ。

 

「そうだ。今度のライブさ、乃木坂のメンバーも呼ぼうよ!」

ひめたんは目を輝かせている。

「良いね!でもみんな来てくれるかな?」

「来てくれるよ!なんたって仲間なんだからさ!!」

「とりあえず誘ってみよっか。誰に連絡つく?」

「私はひなちまとゆったんは今でもたまに連絡とってるよ!」

「じゃあその二人誘ってみて。私はせいらりん、みさ先輩、まいまいに連絡してみる」

「わかった!!」

 

そこから二人は思い出話に花を咲かせていく。

 

452 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 22:35:23.39 ID:hxHh+5Np0

ここで我々はまたあの母親のところへと戻ることにする。

場所は東京調布市、駅前のスターバックス。まだ母親はついてはいないようだ。

そこには3人の女がいる。そのうちの一人は生田だ。

 

「いよいよまっつんと会うんだね・・・」

生田が不安そうにつぶやく。

「緊張してる?」

彼女と電話で話していた女が聞く。これがひなちまだろう。

その立ち振る舞いには独特のしなやかさがある。京都人らしさなのかもしれない。

「うん・・・すっごい久しぶりだし」

「いくちゃんはぁまださゆりんのこと怒ってるの?」

もう一人の女が口を開く。ニコニコと笑いながら舌ったらずの口調で喋る女は誰もが親としての本能をくすぐられるものだ。

たれ目が目立つ柔和な顔立ちもそうさせる要因の一つだろう。

「・・・わかんない。とりあえず会ってみて顔を見てどういう感情が湧くか次第」

「まあやはぁ皆で仲良くしてほしいから、あんまり怒らないでほしいなぁ」

「そうだよ!もう昔のことだしさ。それにさゆりん一人が悪いわけじゃないんだし!」

そういうひなちまの笑顔もひきつって見える。

 

「そりゃ私だってさゆりんだけが悪いなんて思ってないよ、でも少なくとも20年近くも私たちから逃げ回ってたのは事実でし

彼女だって全くやましい感情がなければ逃げ回る必要なんかないんだから、それにさっき電話で謝ってきたし、やっぱあの

ことに深くかかわってるのは間違いないんだよ!」

「・・・娘さんはどんな子なの?」

「のぞみって名前。二人に良く似てて可愛い子だよ。さゆりんとはすっごい仲良しみたい」

「その子がぁ知ったら悲しむだろうねぇ・・・」

「うん・・・」

 

その時、店のドアが開く。

「いらっしゃいませー」

店員が明るく挨拶をする。

三人は息を飲んで入口の方向を向く。

我々にとっては非常になじみのあるシルエットが入ってきた。母だ。

 

そのまま彼女は3人が座るテーブルへと一直線に向かう。

「ひさしぶりやな」

その声は普段聞くことのない強いトーンである。

 

454 名前:名無しさん@実況は禁止です :2014/02/15(土) 22:43:50.72 ID:MZdWDWvD0

今北

うっわ今夜は緊張すんなぁ…

音楽で成功を収めてるさゆにゃんとひめたんにはまだ「乃木坂」はあるんだね

久しぶりのメンバーが集まって、さてどうなる…続きたのしみ

 

456 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 23:37:40.78 ID:hxHh+5Np0

空気はコップ一杯に入った水のように張り詰めている。

 

「ひ、ひさしぶりだねぇ、さゆりん」

最初に口を開いたのは、まあやと呼ばれた女だ。

「まあや、久しぶりやで。何してるん?今」

「まあやはぁ、地元でお好み焼き屋さんやってるんだぁ。」

「そうなんか~まあやお好み焼き大好きやったもんなぁ」

「うん!家族みんなで経営してるんだ!」

「ご両親と一緒にやってるんか?」

「あと旦那さんもだよぉ」

 

残された二人は黙り続けている。

 

「なんや、まあや結婚したんか。まぁもう33やもんなぁ、いつまでも子供みたいな感じだったわ。子供はおるんか?」

「いるよー、男の子が二人。まだ5歳と3歳なんだー。今日はママに面倒みてもらってるの」

「そうなんかーわざわざ来てもらってごめんなんよー」

「ううん、久しぶりに東京来てみたかったからちょうど良かったぁ」

 

「さゆりん、久しぶり」

つづいてひなちまが声をかける。

「ひなちまも変わらんなぁ。相変らずはんなりしてるわ」

「今は本当に京都に住んでるからね。土地に染まったのかな」

「さっきいくちゃんから電話で聞いたでー。本物の京都人になれてよかったやんけー」

「ニセ京都人っていうのずっと気にしてたんだから。ほんと良かったよ」

「今は何してるん?」

「ダンスの先生してるよ。ちゃんと教室まで開いたんだ!」

「ほんまかー。凄いなぁ。ひなちまダンス好きやったもんな。結婚はしてるんー?」

「うん、坂之上君って覚えてるかな?恐竜のモノマネをするっていう私がモノマネする子。あの人と大学時代ばったり再会し

てそれで結婚したの。」

「懐かしーヾ(@⌒ー⌒@)ノ運命的やな」

「うん、今は夫婦二人で幸せに暮らしてるんだ」

「ホンマに良かったなぁ。今日は来てくれてありがとな」

「ううん、私から行くって言ったの。さゆりんにも会いたかったし」

 

緊張感はだんだんとほぐれて行っている。しかし生田は依然として黙ったままだ

 

457 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/15(土) 23:39:42.54 ID:hxHh+5Np0

皆さんの意見をフィードバックして、もともとのプロットを結構変えてるので大分時間かかります。

お待たせしてすみません。

とりあえず今日はこれくらいで。

 

458 名前:名無しさん@実況は禁止です [sage] :2014/02/15(土) 23:41:38.28 ID:jUmWyeVh0

>>457

毎日ありがとね~

マイペースに書いて行ってくださいね~

 

550 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 20:16:37.79 ID:pRg/bYq70

自然と緊張感はほぐれていく。しかし生田は未だ下を向き黙り続けたままだ。

「いくちゃん、大丈夫?」

ひなちまが優しく聞く。

 

「いくちゃん・・・ごめんな」

母がそっと話しかける。

生田はその言葉に反応し、少し顔を上げた。その眼には涙が浮かんでいる。

「今更謝んないでよ・・・」

今にも崩れ落ちそうなほど弱弱しい声だ。

「でも、いくちゃんにはしっかり謝んないといかんから・・・」

「じゃあなんでずっと隠れてたのよ!さっさと出てくればよかったじゃん!」

その声の大きさに周りの客も振り返る。

 

「そうやな・・・ごめん。ウチも怖くて・・・」

「私がどんな気持ちでこの16年間過ごしてきたと思ってんの!?乃木坂が解散して、あの頃が闇に葬られて。私の人生はその後ずっと空っぽだった。

あれからピアノも満足に弾けなくなって、プロへの道も諦めた。

今じゃしがない音楽教師。まさかこんな風な人生になるなんて、あの時は考えてもなかったよ!

でも合唱を生徒たちに教えることで、やっと生き甲斐が見つけられた気がした。

子供たちがどんどん歌が上手くなっていくのを支えるのは、本当に幸せなこと。

これで私の人生もやっと報われるんだって思ってた、まさかその矢先にのぞみちゃんに会っちゃうなんて。

なんで今更私の前に現れるのよ!」

そう一気にまくしたてると、生田は顔を覆い嗚咽を漏らし始める。

 

「いくちゃん、ホンマにごめん。いくちゃんの人生を台無しにしたのはうちなんや。許してほしいなんて言わないけど、でも誤りの気持ちだけは伝えたいんや。」

母はそう言うと、頭を深く下げた。

暫く誰も言葉を発さない。生田の泣き声だけが響き渡る。周りの客も気まずそうに席を立って行く。

 

552 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 20:21:52.92 ID:pRg/bYq70

「いくちゃん、さゆりんもぉここまで言ってるんだし、許してあげようよ」

まあやが優しく話しかける。

「まあやは悔しくないの!自分の夢を絶たれて、広島から中学生で出てきてあんなに頑張ってたじゃん!」

 

「まあやもねぇ、確かに残念だった。ああいう形で乃木坂が解散しちゃったときは。

でも、まあやも今お母さんになってみてわかるんだ。さゆりんの選択は何も間違っていなかったって。

多分誰でもああしたんだと思うんだ。女の子だったら。

それにね、まあやにとってあの4年間は本当に良い思い出なの

右も左もわからないような中学生がアイドルになって、ファンの人がたくさんついて、時々つらくて泣いちゃったこともあるけ

ど、そんな時だってメンバーのみんなが支えてくれた。

今でも覚えてるんだ、初めて選抜に選ばれたとき1期生の皆がまるで自分のことのように喜んでくれたのを。

まあや本当にうれしかった。乃木坂46に入れて本当に良かったなぁって思ったの。

ねぇ、さゆりん覚えてる。あの時初めての選抜で緊張してるまあやにさゆりん色々教えてくれたよね。

自分だって二列目に落っこちて落ち込んでるはずなのに。そんな中でも毎日まあやのために一緒に考えてくれたよね。

さゆりんはいっつもへらへらしてるようだったけど、人一倍努力してたし、誰よりもメンバーの事を真剣に思っていてくれて

た。

だから今でもさゆりんに対しては怒りなんて湧かない、むしろ楽しい思い出をありがとうって感謝の気持ちが殆どだよ。

ねぇ、いくちゃん。あの頃の良い思い出をそんな風に悲しく汚したら乃木坂が可哀想だよ。

もうずっと昔のことなんだしさ、許してあげよう。そして笑顔で想い出話でもしようよ。」

 

話しながら、まあやの声も涙で震えていった。

それを聴いている他の二人も、その顔はぐしゃぐしゃである。

「まあや・・・本当にありがとな」

母は再び深々と頭を下げる。

「まあやの言うとおりだよ、ね、いくちゃんもさゆりんを許してあげよう。

私もちょっと思うところはあったけど、まあやのおかげで気づけたよ。

乃木坂って本当に素晴らしいグループだったんだよね。そういう記憶だけで今は十分」

ひなちまの顔には笑顔が戻っている。

 

560 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 20:52:02.97 ID:pRg/bYq70

生田はゆっくり顔を上げ、小さな声で喋りだす。

「そんなこと言ったって・・・私がどんな気持ちで過ごしていたと思ってるの・・・

私にだってあの頃のことは本当に良い思い出だよ。乃木坂46以上のアイドルなんて空前絶後現れないと今でも思う。

特にさゆりんは完璧なアイドルだったよ。可愛くて、朗らかで、面白くて

私にとって憧れだった

私が騒いでも唯一許してくれる優しいお姉さんでもあったし。

ななみんなんか結構注意してきたけど、そういう時さゆりんがいっつも守ってくれてたから・・・

だから私はさゆりんが好きだったの・・・

それなのに、どうして私を選んでくれなかったの!

しかもこんなに長い間消えちゃうなんて!

この16年間、さゆりんのことを忘れた日は一日も無かった。

それは確かに恨みの気持ちもあったけど、本当は凄く心配してたんだよ・・・

今日だって本当はあんな風に怒るつもりじゃなかった。

会えるだけで凄い嬉しかったから。

でもなんか、さゆりんの顔見たらどうしても素直な気持ちを話すことが出来なかった

大人になったつもりだけど、さゆりんの前では高校生の私が出てきちゃった。

私が、本当に言いたかった言葉はこうなの

元気で良かった。会いたかったよ、さゆりん」

今の、生田の顔はまるで子供のように純粋である。

 

「いくちゃん・・・ありがとう、うちも、うちもずっと会いたかった!」

「さゆりーん!」「いくちゃん!!」

二人は涙を流しながら抱き合う。

ひなちまとまあやもそれを見て笑顔で拍手を送る。

涼しい風が彼女たちの周りを吹きぬけて行った。

 

563 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 21:20:28.15 ID:pRg/bYq70

いったん我々はこの現場を離れる。

そして高円寺へと向かう。

ななみんと桜井が万理華探している最中である。

 

「とりあえず万理華の行きそうなとこ探してみようよ」

桜井が提案する。リーダー気質なのだ。

「どこだろ・・・古着屋とか?」

「今更古着って年でもないでしょ~、自分でブランド立ち上げてるんだし」

「でも万理華って古着大好きだったじゃん。しかも性格的に年取っても変わらなそうw」

ななみんがいじわるっぽく微笑む。

「確かにねぇ。他に何の案も無いし、とりあえず回ってみますか」

 

二人は手当たり次第古着屋をまわっていく。しかし流石の高円寺、ショップの数は膨大であり中々大変な作業だ。

「すみませーん、あの、こちらに丸顔の女来店したことあったりしませんかねぇ。この写真なんですけどー」

「そう、すっごい丸い顔で。うーん一人で歌とか歌ったりしてます。」

「とにかく丸いんです。身長は160弱くらいで。あとなんか変な絵とか書いたりしてます。」

「満月か雪だるまかこの人かってレベルなんですよ!そうそう、踊りながら歩いてたりもするような」

 

「そうですかーすみません」

「ありがとうございます」

「やっぱ来てませんかぁ」

「他をあたってみます」

 

どうやら見つからないようだ。

「うーんやっぱ古着はもう買ってないんじゃない?」

「そうかも。参ったなぁもう他に手立てないよ」

「どうしよっか・・・」

二人は頭を抱える。

 

「とりあえず、休憩しよっか」

ななみんが提案する。

「そうだね、適当なカフェでも入ろうか」

「カッフェェェ?違うでしょーwこれよこれ」

手をおちょこの形にして傾けるななみん

「まだ昼間だよー」

「良いから良いから。こういう暮らしするためにこの仕事選んだんでしょ」

「しょうがないなー」

二人は昼間からやっている店を探して、街の外れのバーに入って行った。

 

568 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 22:06:13.51 ID:pRg/bYq70

暗い店内にはまだ他に客はいない。

「いらっしゃいませ」

イケメンバーテンダーが注文を取りに来る。

「私ビール」

ななみんは間髪入れず答える。

「じゃあ・・・ジントニックで」

「かしこまりました」

 

「こうやって二人で飲むの久しぶりじゃない?」

桜井がしみじみとつぶやく。

「そうだね、最近忙しかったからね・・・」

ななみんも心底疲れているようだ。その声には元気がない

 

「なぁちゃんのイベントも成功して良かった」

「ふふ、昔からああいう場で凄い緊張する癖に、前に出ると一気に輝くんだから。」

「流石だよね。あれがセンターのオーラってやつなのかな」

桜井は遠い目をしている。

 

二人の前に酒が運ばれてくる。

「とりあえず飲みましょう。」

 

「そうだね!かんぱーい!!」

 

結構なペースで二人は酒を進めていく、まだ昼間だと言うのに大丈夫なのだろうか。

「ねぇねぇ、お兄さんイケメンじゃない?」

「たしかにーかっこいい!!」

「ありがとうございます」

すっかり出来上がってきたようだ。

「万理華もしかしたら来てるかも、イケメン好きだしww」

「それはななみんでしょーーw」

「いいから聴いてみよーよ、あのー丸顔の女見たことありますぅ?」

「この写真の女なんですけどー」

桜井が万理華の写真を見せる。

 

578 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/16(日) 23:31:01.13 ID:pRg/bYq70

「ああこの人ならこの前いらっしゃいましたよ」

バーテンダーは何気なく答える。

「え!どんな感じでした!?」

桜井は身を乗り出す。彼は少しひるんだようだ

「どんな感じと言われても、そういえばあのポスターに注目してましたね」

「ポスター?」

「あそこに貼ってるやつです。井上小百合さんの来日公演ポスター」

バーテンダーは奥の壁に貼ってあるポスターを指さす。

 

「あ、さゆにゃん来日してるんだ。しかもゲストにひめたんまで出るんだって」

「ホントだ、私たち何も知らされてないね・・・」

桜井は淋しそうである。

「これから連絡来るかもしんないじゃん。大丈夫大丈夫!」

「まぁいいや。それより、この女どこに住んでるかわかりますか?」

切り替えが早い女である。

 

「いやぁちょっとわかりませんねぇ。一回お見えになっただけですので」

「そうですか~。うーん残念。」

「でもさ、高円寺にいることが事実って分かっただけでも良かったじゃん」

「それもそうだね!よし、じゃあまた聞き込みに出ますか。」

二人は元気よく店を飛び出す。外は夕暮れ、若者やカップルで溢れている。

 

「あー青春だなぁ。羨ましいなぁ」

「そうだね~。私たちはこういうの許されてなかったからねぇ」

「でもさ、結構あそこもドロドロしてなかったw?」

ななみんはまた意地悪な顔になる

 

「確かに。優里とか凄かったしね。らりんに対する嫉妬」

「そうそうwいくちゃんもさ、さゆりんにホの字だったじゃんww」

 

「ねぇーやっぱあんだけ可愛い子だらけだとそうなっちゃうのかなぁ」

 

二人が他愛のない話をしながら歩いていると。道の途中に人だかりができていた。

「なにこれ?」

桜井が尋ねる

「さぁ、なんだろ。なんかの開場待ちみたい

どれどれ・・・MISA先輩ソロライブ・・・あれ、この写真・・・」

「もしかして、これってみさみさじゃない?」

桜井が素っ頓狂な声を上げる。

「え、まさか」

「絶対そうだよ。顔だって面影あるし。私たちも入ってみようよ」

「でもチケットとか持ってないけど」

桜井がいたずらっぽく笑う

「大丈夫、まかしといて!」

 

590 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/17(月) 00:45:56.56 ID:BpYeDv5x0

桜井はそう元気よく叫ぶと

受付に向かっていった

「今晩は。乃木坂出版の桜井と申します。」

そういって名刺を差し出す。するとそれを見た受付の顔色が変わった。

「乃木坂出版の桜井様でいらっしゃいますか。本日はどのようなご用件で?」

「このMISA先輩のライブ、見てみたいんですけどぉ」

酔っているので呂律がしっかりと回っていない。しかしそんな桜井に対しても相手は尊敬のこもったまなざしで答える。

「もちろん、桜井様でしたらいつでも見ていただいて結構です!さぁ、どうぞどうぞ!」

桜井はななみんの方を振り向き、得意気に笑う

「どうなってんの?」

ななみんは呟く。

 

「私ねー、乃木坂解散してから会社と組んで色々仕事してさ。そのコネで出版社立ち上げたんだけど、最初は音楽系に凄い

力入れてたの。

こういう小さなライブハウスとかたくさん廻って。零細出版社だったけどね

でもこの界隈じゃ結構人気ある雑誌でさ。高円寺とか中野とか下北とか顔利くんだよね。」

「へぇー知らなかった」

「ななみんがなぁちゃんの仕事持ってきてくれるまでずっとそういうことしてたんだ。

それはそれで楽しい仕事だったけど、まぁでも今の方が実入りも良いしななみん、なぁちゃんと一緒に仕事出来るし、最高だよ。」

「なにそれw照れるよ」

ななみんの顔が真っ赤になった。

 

会場内はたくさんのファンで溢れている。そのほとんどが彼女たちより少し年上の男だ。

「ねぇ、この人たちもしかしてみさみさの熱狂的なファンじゃない?」

桜井は不安そうにしている。

「そうだろうねぇ、結構年季入ってるしねw」

「だとしたら私たちに気づいちゃうかもしれないじゃん」

桜井の眼は真剣だ。

「まぁ大丈夫でしょw玲香髪型変わってるし、私はマスクもってきたから」

「だと良いけど」

 

話していると会場のライトが消える。

ファンのボルテージは絶好調になる。

いよいよライブが始まるようだ。

 

597 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/17(月) 01:08:35.77 ID:BpYeDv5x0

「みさみさーーーー!!!!!!!!!!!」

ファンの声援がライブハウスを揺らす。

ライブはすさまじい熱気とともに進行している。

MISA先輩と呼ばれる女は、40手前ほどであろうか、しかし年齢を感じさせない若いパフォーマンスを披露している。

基本的にはクラシックギターの弾き語りスタイルであるが、曲調は非常にアバンギャルドだ。

そして、時にコテコテのアイドルソングをバックにダンスを披露するその姿は往年の戸川純のようでもある。

また、何故かHIP HOPのMCもやっているようだ。時折フリースタイル調にライムを繰り出している。

全体を通し、非常にとっちらかった内容のライブではあるが、そのパフォーマンスには見てるものを圧倒的に惹きつける何か

があるのは事実だ。

 

いよいよライブも終盤に近づいた。

「みんなー今日も盛り上がってくれてありがとー!!」

MISA先輩が叫ぶ。MCは普通である。

「みさたーんぺろぺろーーーー!!!」

一番前に陣取っている女ファンが叫ぶ。これも40近い、結構年季の入ったファンのようだ。

「じゃあ最後にいつもの聴いてください!”Street Dreams”」

観客が湧きあがる。キラーチューンのなのだろう。

 

ピープ音が響きわたる。トラックが流れ出す。MISA先輩はマイクを持ってライムしだす。

 

“道半ば あきらめた奴ら

ハード過ぎて箸投げた奴ら

都会に飲まれた奴ら 今じゃ連絡も途絶えた奴ら

今どうしてる? 気になるぜ

夢もって生きてくんねぇ?粋がって

みさの方なら相変わらず

誰も止めらんねぇハイパーな奴

 

次の人生ってどんな風? 推してるか? リアルなアイドル

幸せにしてんならばそれでいい

なんかありゃ電話すりゃそれでいい

いくらブサイ奴が売れたって

訳わかんねぇ紛いが増えたって

心配すんじゃねぇ みさがいるぜ

あきらめた奴らの分も走るぜ

 

みさがNo.1アイドルドリーム

不可能を可能にした大分人

これがみさのスタイル みさのヴァイブス

ぜってぇ誰も真似できねぇみさのライフ

掴めNo.1アイドルドリーム

胸はれ誇り高き日本人

声上げな 声上げな 声上げな みんな声上げな”

 

642 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/17(月) 23:09:54.02 ID:BpYeDv5x0

ライブは大興奮の中幕を閉じた。

「・・・すごかったね」

桜井は放心してしまったようだ。

「う、うん個性的だったね」

橋本も圧倒されたようだ。

 

「どうしよっか、バックステージ行ってみる?」

桜井が提案する

「うーん、確かにみさみさだったけど・・・なんか久々すぎて気まずいな。」

「でもここまで来てノータッチで帰るってのもあれじゃん」

「それはそうだけど・・・」

二人がそんな話をしていると。女が近づいてきた。会場の最前線で叫んでいたあの女だ。

 

「あれーーー!!もしかして玲香じゃない!?」

突然話しかけられた桜井はおびえた表情を見せる

「あの・・・どちら様ですか?」

「嫌だな~忘れちゃったの?中田だよ!中田!!ほらこの動き!」

女はそう言いながら腰をぐりぐり回しだした。

「あ!!!花奈!?」

「えーー花奈なのw!?」

ななみんも叫ぶ

 

「そうそう、上から読んでも下から読んでもナカダカナ横から読んだらダ!!の中田花奈だよ~

ってこっちはななみんじゃーん!何してんの二人ともー超久しぶりじゃない?」

中田はハイテンションに叫ぶ。久々の再会に嬉しさが隠せないようだ。

 

「それはこっちのセリフだよー、花奈こそ何してんのー?」

「オタ活に決まってんじゃん!しかも今日はみさみさの晴れ舞台なんだしさ!気合入れてきたよ。二人だって見に来たんでし

ょー?」

「いやぁそういうわけじゃないんだけど、たまたま通りかかったらやってたから、もしかしたらみさみさかなぁと思って入ってみ

たんだよね」

「そうなんだ!凄い偶然!そういえば二人ともこの前テレビ見たよー。

凄いねぇ、なぁちゃんと一緒に今や世界的な活躍してるんだよねぇ」

中田は羨望のまなざしで二人を見つめる。

 

「ま、まぁねwそんな大したことじゃないよw」

ななみんは謙遜したが、口ぶりから嬉しさが隠せていない。

「いやいや本当に凄いよ!まいやんもそうだけど、皆立派になったねぇ。そうだ!みさみさに会っていくでしょ?私TOだから裏

行けるんだ。着いてきて!」

「あ、ちょっと花奈!」

中田はすたすたとバックステージへと向かっていく。

「・・・行くしかないか」

二人もその後をついて行った。

 

644 名前:名無しさん@実況は禁止です :2014/02/17(月) 23:14:53.72 ID:pNCG3MFz0

>私TOだから裏行ける

・・・なんだとぅww

 

648 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/17(月) 23:40:45.83 ID:BpYeDv5x0

楽屋では先ほどまでステージで熱いパフォーマンスを繰り広げていた、MISA先輩が関係者たちと談笑している。

「みさた~んぺろぺろ~~~~~~」

中田が元気よくその輪の中に飛び込んでいく。

「花奈~、今日も凄い大きな声で応援してくれてありがと~~」

「ううん、みさたんの為だったら中田喉が潰れたって声を出し続けるよ!」

「花奈・・・」

「みさたん・・・」

二人は潤んだ瞳で見つめ合う。

 

「あの~」

桜井が恐る恐る声をかける

「あ、忘れてた。みさ先輩!今日はスペシャルゲストがいるのであります!!」

「え、もしかして・・・玲香!?それに・・・ななみん!?」

みさ先輩の眼は驚きでまん丸になっている。まるでビー玉のようだ。

 

「久しぶりだね、みさみさ」

ななみんが懐かしそうに声をかける。

「乃木坂解散して以来だから、もう20年近いもんね」

桜井も懐かしそうだ

 

「そうなんです~今日はなんとこの二人が見に来てくれてたんだよね!

いや私もびっくりしたよ!なんか見たことある顔だなぁと思って、よく見たら玲香なんだもん!

しかも偶然見かけて入ってきたんだって!凄くない?」

「そうなんだ!感激だよ~まさかこんな大物二人に見に来てもらえるなんて。

テレビ見たよ~凄いねぇ。日本中のアーティストの憧れの的だよ」

二人はかなり有名人のようだ。

 

「でもそれはなぁちゃんでしょー?」

桜井が照れくさそうに尋ねる。

「いやいや、なぁちゃんもそうだけどそれを支えてきた玲香も凄いし。発掘したななみんも凄いよ!」

「そうだよ、うちの娘だってどいやさんどいやさんって毎日その絵ばっか描いてるもん。

そういうものに関わってるってのは立派なことだよ!」

中田は自分の事のように誇らしげだ。

 

「あ、花奈子供いるんだ?」

「うん、4歳の女の子。いつかはアイドルにしたいと思ってるんだ。」

「良いね~。花奈アイドル大好きだもんね」

桜井が羨ましそうな顔で答えた。

 

653 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 00:02:07.67 ID:ZqIxFlCl0

「ところで二人はなんで高円寺にいるの?」

 

みさ先輩は不思議そうだ。高円寺という場所と大物二人のイメージが合わないのだろう。

「あ、そうそう。それにはちゃんと理由があってさ。二人は万理華どこにいるか知らない?」

ななみんが思い出したように尋ねる。

 

「何?万理華探してるの?だから高円寺来てるのかー。私知ってるよ、どこ住んでるか」

中田がさらっと答える。

「え!?どこどこ??」

ななみんは思わず身を乗り出した。

「こっから少し行ったマンションだけど、でも今はいないよ。出かけてると思う

それにまりかって携帯もろくに出ないし、連絡取るの難しいんだよねぇ」

「どこに行ったかわかる?」

桜井は期待と不安が織り交じった表情で聞く。

 

「うーんどこだっけなぁ・・・あ、そうだ。まいまいのとこ行くって言ってた気がする」

「まいまいのとこ?」

「うん、まいまい今静岡戻って絵の先生やってるんだよねー。なんか最近疲れたからそこ行って癒されてくるって言ってた」

ななみんが渋い表情を浮かべる。

「静岡か・・・まいまいの連絡先わかる?」

「うーん、ちょっとわからないなぁ。調べたら出てくると思うけど。ごめんね」

中田は申し訳なさそうだ。優しい人なのだろう。

「ううん、十分手がかりになった。ありがとう。まいまいの連絡先調べて電話してみる」

 

二人は立ち上がる。

「今日は楽しかったよ。みさみさ、凄く良いライブだった。花奈にも久々に会えてうれしかったよ。またね!」

「もう帰っちゃうの?打ち上げ参加していけばいいのに」

みさ先輩は淋しそうにする。旧友との再会をもっと楽しみたいのだろう。

「ごめん、ちょっと急いでるからさ!また今度ね!」

そう叫ぶと二人は楽屋を飛び出していった。

 

658 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 00:37:14.30 ID:ZqIxFlCl0

我々は静岡県に向かう。

大きな茶畑のほとり、そこに建つ古い日本家屋。囲炉裏を囲む二人の女。

一人は大量の絵を手元におき、それらを一枚一枚丁寧に眺めている。

 

「まいまーい。まだ終わんないのぉ?」

もう一人の女が退屈そうに尋ねる。二人の年の差は5歳ほどであろうか。

「ごめんね陽菜ちゃん。もうちょっとで終わるから待っててね。」

まいまいと呼ばれた年長の女は優しく微笑みながら応える。

「まいまい真面目なんだからなぁ。そんなの適当にちゃちゃっと終わらせちゃえばいいのに」

 

「駄目だよぉ。お金払ってもらってるんだからこういうのはしっかりしないと。

・・・ねぇ陽菜ちゃん見てみて、この子達の絵。殆どどいやさんが描いてあるよ。」

陽菜と呼ばれた女が覗き込む

「ホントだぁ。なぁちゃん凄いね。こんな影響力あるキャラクター作り出すなんてさ。あのおさわりの西野がねぇ・・・」

「そのあだ名懐かしい!よく覚えてるね!」

「そりゃ私がつけたんだから、覚えてるに決まってるでしょー」

陽菜は突っ込みながら、まいまいの肩にもたれかかる。そのまま唇を白い首筋に近づけた。

まいまいの身体が小さく震える。

 

「こーら、まだ駄目だってばぁ。あとでゆっくりしてあげるから待ってて」

「えーもう我慢できないよぉ。まいまーい!一番可愛いよぉ。聖母様だよぉ・・・」

「ッ・・・ちょっと、イヤッ・・・待ちなさいって・・・もう・・・」

まいまいの手が陽菜の背中にいやらしく廻った、その時。

 

「・・・なにしてんの?」

もう一人の女がふすまを開けて、入ってきた。

我々はこの女を知っている。そうあの丸顔の女である。

 

「ちょっと万理華!!空気読みなさい!!」

陽菜が叫ぶ。

「いやだぁ、万理華まだ起きてたの?寝たのかと思ってた」

まいまいの顔は真っ赤だ。

 

「眠れるわけないでしょー。二人がずっとこそこそ話してるから気になっちゃってさぁ」

万理華も囲炉裏の傍に腰を下ろした。

 

666 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 01:01:45.23 ID:ZqIxFlCl0

「で、何してたのw?」

万理華がいたずらっぽく質問する。

「な、なんでもないよーちょっとじゃれてただけ」

まいまいは、はだけたシャツの胸元を直しながら応える。

「ふーん、それにしてはまいまい随分色っぽい声出してたけど・・・」

「そ、それは、ほらちょっとふざけてそういう声出すときもあるじゃん?ゆったんとかよくやってたし!」

「ゆったんはガチでまいやんの事そういう目で見てたんだけどね、それはまいまいも知ってるでしょぉ?」

「あ、そ、そうなんだぁ、いやぁ知らなかったなぁ。確かにゆったんよくまいやんのスカートとかに頭突っ込んでたよねぇ。あれ

ガチだったんだねぇ」

「いいよ、白々しいなぁ。別に恥ずかしがることないよ。ほら、うちらの周りって結構そういうの多かったしさ。しかも川後とまい

まいなんて一番怪しかったから、当時からね

だから今更そういう関係だったとしても驚きはしないし、まぁ隣に私がいるのにおっぱじめるのは無神経だと思うけど」

 

「なんだよこの雪見大福!いきなり人の家に押しかけてきて、説教なんて。お前は押しかけ番長か!!」

今まで黙っていた陽菜が口を開いた。

「川後さーん。また変なあだ名つけるのやめてよー。泣くよーー」

万理華は顔をしかめる。

「万理華は変わんないねぇ。いくつになってもそんな感じなんだなぁ。懐かしくなっちゃった。」

「確かに。万理華ずっと少女のままみたいだよ。良いなぁ羨ましい」

まいまいも、すっかり気を取り直した様子だ。

 

「やめてよ。私はもう少女でもないし、アイドルでもない。

そんな風にふるまうには、今の私は淀み過ぎてるの。

都会で、大きな仕事をやるようになって、私どんどんどんどん自分が濁っていってるのがわかった。

脳の中がぐちゃぐちゃになっていって、でも流れている血はさらさらで。身体のバランスはもうめちゃくちゃ。

逆立ちしながらタイトロープの上を歩いている感じ。私の脚は天に上るために会って、手は地面を歩くためにある。こういう

感覚がもうずっと続いてるの。

それって本当に怖いことなんだよ?だってそのロープの下には大きなライオンが沢山口を開けて待ってるんだから。

だから少し休もうと思って、まいまいのとこにお邪魔したんだ。

・・・まさか陽菜までいるとは思わなかったけど」

 

730 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 20:21:39.84 ID:3fv37xEcP

万理華はそう吐き出すように喋りきった。二人は気圧されたのか沈黙が続く。

 

「・・・ごめん、万理華。そんな悩んでたなんて知らなかったから、軽々しい口聞いちゃって」

やっと、陽菜が申し訳なさそうに口を開く

「万理華、いくらでもいて良いから、ゆっくり休んでってね」

まいまいも優しく語りかける。

 

その時、まいまいの携帯が烈しく震えだした。

「知らない番号だ・・・もしもし?・・・え、玲香!?久しぶり、うん今静岡に戻ってるの・・・そう子供たちに絵教えてる・・・

いやいや、そっちこそ見たよテレビ、凄いね!生徒もみんなどいやさん好きだもん・・・うん立派だよ・・・それで、どうしたの?

え、万理華?うん、うちに来てるけど・・・え!?今から静岡来るの!??・・・いや迷惑ではないけど・・・わかった、待ってる。・・・う

ん、じゃあまたね」

電話が切れた。

「玲香だった、今から静岡来るって・・・」

「え!?」

夜は更けていく。

 

さて、ここで我々は時間を少し戻ることにする。

母、いや松村沙友理が生田たちと会っているスターバックス。

感動的な再会を果たした4人は想い出話に花を咲かせていた。

 

「いくちゃん少し料理上手くなったんかー?」

松村が意地悪っぽく微笑みながら聞く。

「流石にもうクッキングモンスターではないですよーだ。さゆりんこそどうなの?のぞみちゃんにまともな食事食べさせてあげ

てるわけ?」

「当たり前やんけー。一昨日だって天ぷらを揚げたし、昨日も愛情たっぷりりんごカレー作ったんやで!」

「ふーん、みんな成長してるんだね」

生田は頬を膨らませる。普段の教師の姿からは想像できない、子供のような仕草だ。

 

「まあやはぁお好み焼きに自信あるよぉ」

まあやが割って入ってくる。

「そらそうでしょー。プロなんだからさぁ」

「せやせや。でも今度行ってみたいんよー、まあやのお店」

「いつでも来てよー!家族経営のat homeなお店だからさー」

「まあや相変らず発音良いね、英語の」

ひなちまも参加する。

「そうだよー、今はこの英語力を活かして外国人観光客向けのserviceも充実させてるんだぁ」

「偉いな~大人になったんやなぁまあやも」

「えへへ」

先ほどまでも緊張感が嘘のように微笑ましい会話が続いている。同じ釜の飯を食った仲間の絆というのは何年経っても変

わらないのだろう。

 

「こうやって皆と笑いながら話せる日が来るとは思わなかったんよー」

「私も、またさゆりんと一緒にお喋りできる日が来て嬉しいよ。」

生田は潤んだ瞳で松村を見つめる。

「いくちゃんさっきまであんなに怒ってたのに、すっかりご機嫌だね」

ひなちまが茶々を入れる

「だって~さゆりんと久々に話すとやっぱ楽しいんだもん」

「まあやもぉ、こうやって皆と仲良く喋れて最高に楽しいよぉ」

「また皆で集まったりしたいねぇ」

「うん、あの頃みたいにさ皆でご飯食べたりしたい」

 

松村は気まずそうだ

「でも、みんなうちのこと許してくれるやろうか・・・」

「大丈夫だよぉ、もうみんな忘れてるってぇ」

まあやはとことん無邪気だ。

「まぁ忘れてるかはともかく、さゆりんがしっかりと謝れば怒らないんじゃない?もう大人だしみんな」

「・・・私はまだ完全に許したわけじゃないけどねー」

生田の表情が曇る

 

「いくちゃん・・・」

「でも、さゆりんのことを怒ってるより、一緒に遊んだ方が面白いからこれからは仲良くしてあげる!」

「もう、いくちゃんって恥ずかしがり屋さんなんだからぁ」

 

737 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 21:01:48.95 ID:3fv37xEcP

「ところで、まあやとひなちまは他のメンバーと連絡取ったりしてるの?」

生田が尋ねる。

「うーん、昔はちょくちょくなぁちゃんとか連絡とってたりしたけど、最近はめっきりだなぇ。

ほらなぁちゃんすっかり偉くなっちゃったからさ、私みたいな市井の人間が軽々しく連絡とれるかもわからないし」

「えー、そんなこと気にする必要も無いでしょ。友達なんだからさぁ。

それにあの仕事って玲香とななみんが立ち上げたプロジェクトなんだし、乃木坂みたいなもんだよ!」

「まぁそうなんだけどね、あとはひめたんとかも一応連絡はしてるけど、最近はあんまりだなぁ

ほら、私今京都住まいだからそもそもそんなに仲良くできないんだよねー」

残念そうな口調ではあるが、その表情は暗くはない。恐らく今の暮らしが充実していて過去を振り返る必要が無いのだろ

う。

 

「まあやもぉ、あんまり仲良しなメンバーいないけど。かずみんとは今でもたまに電話でお喋りしたりするよぉ。」

「かずみん懐かしい!何してるんやろ今?」

松村が身を乗り出す。

「今ねぇ、カメラマンとして世界中飛び回ってるよぉ。たまにお店にも来てくれるんだぁ」

「えー凄いなぁ。カメラ好きだったもんねぇ」

「毎日がアメイジング!だって言ってるよぉ」

「懐かしい!アメイジング!とポジピース!日村さんも褒めてたよね」

「かずみん面白かったもんなぁ~」

その時、ひなちまの携帯に電話がかかってきた。

 

「あ、凄いタイミング!ひめたんだよ!もしもし」

「え、すごーい!」

思わぬ相手に三人も興味津々だ。

 

「久しぶりー・・・うん元気だよ・・・ねぇ聴いて!今誰と一緒にいると思う!?・・・

違うよぉ。乃木坂のいくちゃんとまあやと、あとさゆりんだよぉ・・・そう!さゆりんもいるの

・・・うん、その話はもうした、私は最初から気にしてないし・・・そうだよね、ひめたんも別に怒ってないよね・・・うんうん、えー

ひめたんさゆにゃんと一緒にいるの!凄いタイミングだね

・・・それ絶対行くよ!!12月20日ね、場所は?・・・国際フォーラムね・・・わかった、私も可能な限り声かけるよメンバーに・・・う

んじゃあ20日楽しみにしてる」

電話が終わると、ひなちまはコーヒーを一気に飲み干した。

 

「何やって?」

松村が不安そうに尋ねる。

「なんと、ひめたんとさゆにゃん一緒にライブやるんだって!12月20日に国際フォーラムで。それにこないかって」

「え、二人でやるの?」

「うん、他の乃木坂メンバーも知ってたらぜひ誘ってって。行くでしょ?」

「まあや行くー。これで皆に会えるじゃん!」

「私も!どうせ暇だし」

「さゆりんは?」

 

松村は困った顔をしている。

「うちが行ってもええんやろか・・・」

「大丈夫だって、今ひめたんも全然あの時のことは気にしてないって。むしろずっと心配してたって言ってたよ。」

「でも・・・」

「さゆりん、行こうよ!また皆で集まりたいってさっき話したばっかじゃん」

生田が力強く誘う。

「・・・せやな、行ってしっかり自分の口で謝るわ」

「それが良いよぉ」

まあやは嬉しそうだ。

 

742 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 21:43:50.35 ID:3fv37xEcP

「・・・のぞみちゃんも誘おうよ」

突然、生田が重い口ぶりで提案する。

「・・・え?」

松村は虚をつかれたようだ。動揺が表情に表れている。

「いや、のぞみちゃんも誘ってあげようよ。折角だしさ」

 

「いくちゃん、それは・・・」

ひなちまが不穏な空気を察して制止に入る

「なんでー、誘ってあげようよ。のぞみちゃんだってもう高校生なんだしさ、このタイミングで本当のことを教えてあげるべきじ

ゃない?

その機会としては絶好でしょ?今度のライブは」

「でも・・・」

「のぞみちゃんだって可哀想だよ。もう気づいてるんじゃないかな、薄々何かおかしいってことに。

だって冷静に考えてみて。あんなお金持ちの多い女子校に何で父親がいない自分が行けてるか疑問に思うのは当たり前

でしょ。

しかもお母さんは別に働いてる様子もない。一体どこから金が出てるんだろって考えるのが当然だと思うけど。

さゆりんは聞かれたことない?そういうこと」

 

「・・・無いんよ」

「じゃあきっと凄い気を使ってるんだと思う。本当は気になって仕方がないんだよ。

まぁ幸いなことに、うちのクラスにはそういうのを指摘する子もいないから負担になったことはないのかもしれないけど。

でもね、思春期に自分の家庭がおかしいって思ったまま過ごすのは絶対いいことじゃないよ。だってのぞみちゃんにとって

は、人の当たり前が当たり前じゃないんだから。

お父さんにバレンタインデーのチョコをあげたり、家族そろって外でご飯を食べたり、そういう経験をしたことが無いんだよ?

もしかしたら、のぞみちゃんの人生にそういう欠落が暗い影を落としてるのかもしれない。

いくらさゆりんが一生懸命彼女を可愛がってるからって、それだけじゃ埋められないものだってあるの。

その溝を埋めるには、本当のことを教えてあげるしかないと思うけど。」

 

「でも、そしたらお父さんに会いたいと思うかもしれないよ」

ひなちまの語気も荒くなってくる。

「だったら会わせてあげればいいのよ。むしろ誘おうよ、彼も。さゆりん連絡先知ってるんでしょ?」

「・・・」

「黙ってたって無駄だよ。さゆりんが彼の家から支援を受けていることは私たちだって知ってる。

ねぇ連絡とってみてよ。」

 

746 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 22:14:50.76 ID:3fv37xEcP

「いくちゃんやめなよ!折角こうやって仲良しに戻れたのに、なんでそんなぶり返すようなこと言うの!」

「だって、ひなちまは気になんないの?あいつが一体どういう気持ちでいるのか!」

生田は再び目に涙を浮かべはじめた。

「そりゃ気にならないことはないけど、でもさゆりんと仲直りできただけで十分じゃない。

わざわざ、過去の嫌な出来事に触れたいとも私は思わないけどね」

ひなちまもかなり感情は高ぶっているようだ。おっとりした外見に似合わずその手は震えている。

 

「ひなちまに私の気持ちがわかるわけないでしょ!普通に幸せに生きてきたひなちまにさ

私は、私はずっと・・・」

「何それ!私だって乃木坂が無くなってからずっと悲しい気持ちで生きてきたよ。

私にとっても最も輝いてた時期だったんだから!さも自分だけが悲劇のヒロインみたいな口ぶりはやめてよ!」

ひなちまも泣き出しそうだ。

「ねぇ二人ともやめなよぉ。折角楽しい話してたのにさぁ」

まあやが必死に二人をなだめる。

 

「・・・わかった」

松村が重い口を開いた。

「え?」

「わかったよいくちゃん、確かにいくちゃんの言うとおりやな。

のぞみにはいつか本当のことを話さないといけないと思ってたんや。

その時期がついに来たってことなのかもしれないんやな。

・・・うちが自分の口で本当のこと言うんよ。そしてあの人も誘う。そうして全部清算した方がすっきりするもんな」

「さゆりん・・・」

「だからもう喧嘩するのはしまいにしてや。全部うちが悪いんや・・・」

 

その後4人は会話も少なくなり、自然と一人一人家路について行った。

 

次に、我々の視点は娘のぞみの一日を振り返ることとなる。

家を飛び出した彼女、駅では二人の友人が待っていた。

 

「お待たせ~」

「遅いよまっつん!」

二人とも小麦色に日焼けした、活発そうな女子である。

「ごめんごめん。結構飛ばしてきたんだけど。」

確かに彼女の肌にはうっすらと汗が浮かんでいる。

「まぁいいや。じゃあ行きますか」

そう言いながら、3人は改札をくぐっていく。その後ろスターバックスにはあの三人の後ろ姿が映っていた。

 

750 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/18(火) 23:17:33.98 ID:3fv37xEcP

「今日はどこ行くの~?」

のぞみは無邪気な顔で尋ねる。まさか同じ時間、母があんなことになっているとは思ってもいないだろう。

「なんかね、うちの遠い親戚が今度新しくみなとみらいでレストラン始めたんだって。新規開店で安くしてくれるらしいからそ

こ行ってみようかなって思って。」

髪をポニーテールに束ねた少女が言う。

「良いね!横浜行くの久々!何料理屋さんなの?」

もう一人の少女がはしゃいだ声で聴く。こちらは髪を短く切りそろえている。

「うーん、無国籍料理?なんでも作るんだって。特にデザートが絶品だってママ言ってた。」

「デザート!やった!!!」

のぞみは飛び上がらんばかりに喜ぶ。

「まっつんは本当に甘いものが好きだねぇ」

二人が呆れたように顔を見合わせた。

 

三人は渋谷から電車を乗り継ぎみなとみらいまで来た。

結構な道のりではあるが、友達で話しているとあっという間に感じるものであろう。

人ごみを抜け、駅から10分ほど歩いたとこにその店はあった。

 

「ここだよここ」

「”キッチンずっきゅーん!”?変な名前」

その店の看板には、店主と思しき笑顔の小柄な女性が銃を撃つポーズをしているのが写っている。

「なんか、まっつんのお母さんみたいだねこの人w」

「やめてよー、流石のママもここまでは・・・してるかな」

「でもなんか緊張する、結構キャラ濃いよこの人多分」

「大丈夫大丈夫、ママが言うには至って普通の人らしいから。ちょっとスイッチが入るとこんな感じになるらしいけど」

「だと良いけど・・・」

 

三人は恐る恐る店に入る。

「いらっしゃ~い。来てくれたのぉ」

奥から店主が小走りで出てきた。

人のよさそうな顔をした、40手前ほどの女店主だ。

「初めまして、○○の娘です。この二人は友達です。」

ポニーテールの少女が自己紹介をする。

「待ってたのよぉ。私は秋元真夏。よろしくね」

店主は顔いっぱいの笑顔で答えた。

 

751 名前:名無しさん@実況は禁止です :2014/02/18(火) 23:20:04.96 ID:aIEmP+Gb0

まなったんキターッ!!

 

754 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/19(水) 00:09:54.59 ID:e62dAZgYP

「よろしくお願いしまーす。」

「あらあら若くて元気いっぱいね。羨ましいわぁ。さ、座って座って」

席に通された3人はメニューを眺める。

「結構いい人っぽいね」

のぞみがこっそりとつぶやく。

「ね、良かった」

ショートカットの少女もそれに応える。

「何でも頼んでね!おばさん奮発しちゃうから!」

「はーい、ありがとうございます」

 

食事は想像を超える豪華さであった。

基本的には家庭の味と言われるようなメニューなのだが、それぞれオリジナルのアレンジが加えられており飽きさせない。

特にロールキャベツは一際豪華で、見ているこっちも思わず腹がなってしまう。

また、デザートはどれも手の込んだつくりで、とても女性一人で作ってるとは思えない出来栄えであった。

「どうだったかしら?」

食後、秋元がお茶を入れる時感想を聞きに来た。

 

「最高でした!秋元さん!」

三人とも声をそろえて答える。

「ありがとー。そういってもらえると嬉しいわ。」

秋元は恥ずかしそうに笑う。

「ところで秋元さん、店名のずっきゅーんって何ですかwあと、あのポーズ」

ショートカットの少女がいたずらっぽく尋ねる。

「う、あれは恥ずかしいけど私のキャッチフレーズなの」

「え、キャッチフレーズって何ですか?」

「いやね、昔ちょっとだけ人様の前に出る仕事してたから、その時キャラ作りの一環としてああいうことしてたの」

「芸能人だったんですか!?」

「まぁそんなところね」

「えーすごーい」

「大したことないわよ。あなたたちなら可愛いから私くらいにはすぐなれるわ」

本気で謙遜しているようだ。仕草から人の良さが伺える

 

「そういえば、私たちの担任の先生も元アイドルだったんです。乃木坂46ってグループで!」

のぞみが言ったその一言に、秋元は激しく反応する。

「え!?乃木坂46!?それ私も所属してたアイドルグループよ!なんて名前、その先生?」

「嘘!凄い偶然ですね。生田絵梨花って名前です。ご存知ですか?」

「ご存知も何もいくちゃんじゃない!当時の中心メンバーよ!うわあ懐かしい、思わぬ縁ね」

「えー、こんなことってあるんですね。じゃあ記念にずっきゅーんしてくださいよ」

ポニーテールの少女がお願いをする。意地悪な表情ではあるが、同時に憧れもその瞳には含まれている。

 

「嫌だわ、恥ずかしい~」

「良いじゃないですかぁ~ほら」

「もう、しょうがないわねぇ・・・」

まんざらではないようだ。

「じゃあ行くわよ・・・みなさんのハートを打ち抜きまーす、ずっきゅーん」

思ったよりも若々しいその仕草に、彼女たちは苦笑いをするしかできなかった。

「す、すごいですね・・・」

「何よこの空気!もう、だから恥ずかしいって言ったのに!」

秋元の顔は真っ赤に染まる。

 

「だ、大丈夫ですよ。ここにいる松村のお母さんなんかもっと凄いことするんですから」

ショートカットの女がのぞみを指さしながらフォローする。

「ちょっと、やめてよ!恥ずかしいじゃん」

「いいから、のぞみ!お母さんがやってることやってあげなよ」

「えー・・・仕方ないなぁ。あなたのハートを打ち抜くぞ!さゆりんごパーンチ・・・あの、ウチのお母さんさゆりって名前なんで

す・・・秋元さん?」

三人は思わず秋元の顔を見る、そこには既に笑顔はなく、恐ろしいほどの狼狽が浮かんでいた。

 

755 名前: ◆Tsuno/itWjor [sage] :2014/02/19(水) 00:11:32.93 ID:e62dAZgYP

今日はこの辺で。大分来た感ありますね

もうちょっとだけ続きます

 

758 名前:名無しさん@実況は禁止です :2014/02/19(水) 00:17:43.93 ID:VnyWDkFr0

>>755

乙です

いやいやとても楽しみになってきましたね

 

 

(続く・・・)

 

引用元:

 

 

 

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コメント6

0. 名無し@乃木坂46まとめんばー管理人 2015年0月0日 00:00

※アンチコメントには反応しないでください

※連投・自演等、悪意の感じられるコメントは「お問い合わせ」まで、ご連絡ください

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. 名無し 2014年2月20日 00:21 ID:  A2OTgzMzc

こういう小説の書き方ってなんていうんですかねぇ。ポイントは視点が、筆者と読者であること。時系列がばらばら。場面も変わる。

. 名無し@乃木坂46まとめんばー 2014年2月20日 01:08 ID:  A2NDMxNTk

↑自分は好きですね。乃木坂のたくさんのメンバーがそれぞれ全くばらばらな人生を送ってるのがわかりやすいし、それが少しずつ絡み合ってきて最終的にはみんな一緒の場面 時間軸に立つ展開があるというような話の書き方はなかなかふつうの人には書けない。フィクションとしてみると楽しめますね

. 名無し@乃木坂46まとめんばー 2014年2月20日 01:23 ID:  E0MjkyNDA

俺も好き。
「逆立ちしながらタイトロープの上を歩いている感じ。私の脚は天に上るために会って、手は地面を歩くためにある。こういう感覚がもうずっと続いてるの。それって本当に怖いことなんだよ?だってそのロープの下には大きなライオンが沢山口を開けて待ってるんだから。」

脱帽だわ……

. 匿名 2014年2月20日 01:59 ID:  EyODA1NDU

素晴らしい!!

. 名無し@乃木坂46まとめんばー 2014年2月20日 09:41 ID:  k3OTg1NDI

なかなか好評やな笑

. FEAR IS A MINDKILLER 2014年2月20日 17:27 ID:  QwMDYyNDE

レズビア~ン、な要素も入ってるんですね。(ムフフ)

そちらの方面にもう少し突っ走ってもいいかも、な~んて。

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